臨終行儀
さすがNHKの大河ドラマ。7月3日放映の「鎌倉殿の13人」で頼朝(1147~1199)の臨終行儀のシーンがありました。きっと権力者だからということで、しっかり時代考証をしたようです。
阿弥陀如来像の手と頼朝の手を五色の糸で結び、極楽往生を手助けする僧侶の読経の中、身体は頭北面西とし、髻(もとどり)を切り、往生する前に出家するかたちにしました。
ちなみに、放映されていた僧侶の言葉は、出家の偈文(げもん)と言われるもので
流転三界中(るてんさんかいちゅう)
恩愛不能断(おんないふのうだん)
棄恩入無為(きおんにゅうむい)
真実報恩者(しんじつほうおんしゃ)
です。
さて、ここで本人が「南無阿弥陀仏」と称えれば申し分無しですが、すでに頼朝は意識不明でした。また本人はちゃんと台の上で寝かされていました。これで無事に、いざ命尽きようとするときに阿弥陀如来が頼朝を極楽浄土に連れてってくれます。
当時、極楽浄土に行くにはけっこう面倒な手続きが必要と言われました。臨終時には「身ぎれいにしろ」とか「ひたすら極楽往生を正念し、心乱れてはならぬ」とか、他にもいろいろとあるのです。
しかし、法然(1133~1212)はそういう「臨終行儀は不要だ。日ごろから南無阿弥陀仏と唱えればよい。そうすれば必ず極楽往生できる」と言われたのです。また親鸞(1173~1262)は「阿弥陀如来を信ずる心があれば必ず往生できる」とも言われました。
娑婆の縁の尽き方は人それぞれです。でも「臨終行儀は必要ない」「阿弥陀さんを信じて日ごろから念仏しておればよい」という法然、親鸞の教えは極楽往生を願う庶民にとってはありがたい教えだったのです。
参考文献
往生際の日本史: 人はいかに死を迎えてきたのか | 小山 聡子 |本 | 通販 | Amazon